飛び込んじゃった婿の世界
長年付き合った彼女(今は妻)は、結婚願望が強くて、
まだ結婚していないのに、まるで結婚した後のような話をよくする子でした。
でもそのとき、自分はまだ20代半ば。
周りの友人はほぼ独身。
『結婚』というワードには、ちっともピンと来ない。
ただ彼女が結婚に憧れている様子は、話をするときの嬉しそうな表情で伝わっていました。
僕は、そんな彼女を見ているのが好きだったんだと思います。
当時の自分は、明確な夢が描けずにモヤモヤと日々を過ごしていました。
それに対して、彼女には漠然とだけど、一つの想いがありました。
それは、実家の料理屋の未来について。
老舗の部類に入るその料理屋は、一人娘の彼女以外に継ぐ者がいない。
後継問題は彼女にとって、悩ましくも離せないしこりのようなものだったようで…
将来のこと、結婚の事、自分のやりたいこと―
そんなことを自然と語り合ううちに、次第にそのお店の存在が、かえって魅力的に映ってくるようになってきたのです。
自分が力をつけさえすれば、
この激動の時代に残る貴重なお店を、後世へ伝えることが出来る。
そんな風に思うと、とてつもないやりがいを感じるようになりました。
そして彼女の願いを叶える事と、自分のゆく道が重なっていくような気がしました。
そして僕は、婿に入ることを決意して…
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